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File1. 整形外科

「高齢者に忍び寄る背骨の骨折」

 背中や腰が曲がってきた、背が縮んでしまった―― 高齢者のこうした症状の原因の一つとして“骨粗鬆症”が考えられます。こうした場合、従来は、コルセットを装着し、薬を使って保存的治療を長く行うだけで、背骨の骨折治療は積極的に行っていませんでした。すると、後弯変形(背中が丸くなる)や下肢痛、足の痛み、しびれが進んで歩行困難となり、寝たきり状態になってしまうことが少なくありませんでした。

 ここでは、高齢の方にも安全に行える新しい手術についてご紹介します。ご自分の身体状況をしっかり把握し、健康寿命を延伸する治療を選択することをお勧めいたします。

高齢化と骨粗鬆症の有病率について

 日本の高齢人口は3,392万人で、人口の26.7%を占めています(平成27年10月現在)。一方、50歳以降急激に高くなる骨粗鬆症の患者数(図1)については、女性1,000万人、男性300万人だといわれ、女性では70歳以上になると二人に一人が発症する割合です。全身性の骨疾患である骨粗鬆症そのものに症状はありませんが、骨の密度がいちじるしく低下するため、重い荷物を持ち上げる、咳やくしゃみをするといった日常的な動作で無自覚に骨折してしまうのが特徴です。

 骨折の初期(急性期)には、動いたり前かがみの動作がつらい、寝返りが打てないといった症状がみられます。やがて慢性化すると、背中や腰が曲がる、身長が縮む、背中や腰が痛む、骨折しやすくなるといった深刻な症状へと変化します。

 骨粗鬆症の骨折で損傷する部位を多い順に上げると、背骨(骨粗鬆症性椎体骨折)、足のつけ根(大腿骨近位部骨折)、手関節、上腕になっています。中でも、寝たきりにつながる大腿骨近位部骨折と骨粗鬆症性椎体骨折(以前は“圧迫骨折”と呼ばれた)は命にかかわる重篤な骨折であるので、何よりも骨折をしないという予防が重要です。

骨粗鬆症の年代別 有病率
図1 骨粗鬆症の年代別有病率
   出典:『骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015 年版』

骨粗鬆症椎体骨折について

 ここでは骨粗鬆症による椎体骨折(図2)に焦点を当てて、その症状と治療法を説明していきます。

 背骨の骨密度の低下によって骨折(潰れ)すると、後弯変形(背中が丸くなる)が生じるため次の椎体骨折を引き起こしやすくなります(続発性骨折)。そして、2つ以上骨折した場合、寝たきりとなり、認知症や廃用症候群を引き起こし、生活の質が著しく低下します。

 そうした事態を避けるために、当院では急性期に(1)なるべく正常な形に戻す、(2)しっかりと固定をする、(3)組織損傷(侵襲)を可能な限り小さくする、(4)早く動かせるようにして、寝たきりにさせない、の4つを原則として治療を行います。

 潰れた背骨を固定する手術として“人工椎体置換術(図3)”がありますが、この手術は身体に大きな負担を強いるので、高齢者には不向きな手術です。

 そこで誕生したのが経皮的椎体形成術(BKP;balloon kyphoplasty)です。当院では、椎体骨折後に保存的治療を行っても痛みが改善しない場合、健康寿命を延伸する治療として、MRI画像診断を経てBKP治療を行っています。

図2 骨粗鬆症椎体骨折患者の背骨 図3 人工椎体置換術

高齢者の骨粗鬆症も復元可能となった
新しい治療法“経皮的椎体形成術(BKP)”

 経皮的椎体形成術(以下、BKP)は、背中から骨折した背骨に針を挿入し、スカスカとなった骨の中で風船(balloon)を膨らませ、風船によって押し広げられた空間に医療用のセメントを充填することで曲がった(潰れた)背骨を復元するというものです。

 手術の具体的な方法は、ベッドにうつぶせに寝た患者さんの背中を5ミリ程、2ヶ所切開してバルーンの付いた針を2本挿入。その後、バルーンの拡張、収縮・抜去、骨セメントを充填します(図4)。出血はほとんどなく、平均手術時間は30分以内となっています(図5、図6)。術後は疼痛が取れて自力歩行が可能となり、3~4泊の入院で退院される方が多数です(図7)。

(1)背中より背骨に
    バルーンを挿入
(2)バルーンを膨らませる (3)医療用セメントを充填
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  BKP治療動画

図4 BKP治療

図5 椎体骨折の患者さんの背中に治療用のバルーンを挿入 図6 BKP治療を行った後の傷跡
図5 椎体骨折の患者さんの背中に治療用のバルーンを挿入 図6 BKP治療を行った後の傷跡

 BKPは全ての医師が行うことができるわけではなく、規定のトレーニングを積んでライセンスを得た医師のみに許された治療です。現在では世界で100万件以上、日本でも2万件以上の実績があり、その安全性や骨折椎体の安定化、疼痛緩和が確認されたので(図7)、現在は日本でも公的保険が適用されています。

東海大学医学部付属大磯病院・八王子病院におけるBKP治療

約4年間で 214例
平均年齢 78.7歳(64-95歳)
男性 60例、女性154例
手術時間:27.2(16-51)分
入院日数:7.1(3-126)日
(保存的治療患者:在院日数- 30.9日で
ほとんど転院もしくは施設への入所)

図7 東海大学医学部付属病院のBKP治療実績

BKPを行う際の注意事項について

 BKP治療では、手術を安全に行えるよう原則的に全身麻酔を行い、レントゲンで背骨を透視します。こうした条件に耐えられる健康状態であるかどうか、あるいは、骨折した骨の数や形状によって手術が可能かどうかを判断いたします。

 また、BKPは骨折に対する治療のため、BKPを行った後も骨粗鬆症性の治療や定期的な健康診断が不可欠となっています。

【まとめ】

 高齢になって背中が丸くなってしまうと、腰や背中に痛みが出て視界も悪くなるため、転倒しやすくなります。こうした場合、コルセットをはめて安静にする治療が主流でしたが、そのまま寝たきりにつながるケースも少なくありません。そうなる前に高齢者でも手術が可能なBKP治療を行うことで、骨折による痛みや背中の曲がりを改善し、しっかり歩けるようになることが転倒防止につながります。

 骨粗鬆症の治療法やBKP治療について、 詳しくは担当医にご相談ください。

担当医師 Profile

整形外科医長
やまもと ゆきひろ
山本 至宏 講師
診療受付時間のご案内
月~金曜日8:00~11:00、土曜日(第2・4・5週のみ診療)8:00~11:00
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