病院長挨拶
病院長挨拶

病院長
消化器内科学教授
鈴木 孝良
当院は2002年3月、八王子市北東部において、地域医療を基盤とする急性期医療の拠点として開院し、今日まで着実に歩みを重ねてきました。開院当初より電子カルテを全面導入し、診療情報の一元管理と業務体制の高度化を先駆的に推進することで、迅速な情報共有と医療安全を支える基盤を整えてきました。現在では、がん診療連携拠点病院、地域医療支援病院、難病協力病院、紹介受診重点医療機関などの指定を受け、行政機関、医師会、近隣医療機関の皆様と緊密に連携しながら、南多摩医療圏における中核的役割を担っています。また、大学病院分院としての専門性と総合力を活かし、地域の高度急性期医療を支える基幹病院としての使命を果たしています。新型コロナウイルス感染症への対応で培われた経験は、感染症対策のみならず、地域連携や医療提供体制の柔軟性向上という点においても、当院の大きな財産となっています。
当院の基本理念は、「理解と調和の精神とリスクマネジメントに基づいた、患者中心の心温まる医療」です。高齢化が進む南多摩地域では、医療ニーズは今後さらに高度化・複雑化していくことが予想されます。そのような環境にあっても、何より重要なのは、安全を最優先とした医療体制を確立することです。
次の三つの重点施策を軸として病院運営を進めたいと思います。
第一は、地域医療機関との連携と救急医療体制の強化です。高齢化社会の進展に伴い増加する救急医療需要に対応するため、診療所・病院との信頼関係を基盤とした円滑な紹介・逆紹介体制をさらに充実させます。また、救急患者の受け入れ体制を強化し、地域の急性期医療を担う病院として、南多摩医療圏の医療体制を確実に支えていきます。
第二は、Safety-IIとOODAの考え方を取り入れた予防型医療安全体制の確立です。医療の質を支える基盤は安全であり、安全なくして信頼は成り立ちません。従来の「問題の原因を究明する」Safety-Iの視点に加え、「日常診療がなぜ円滑に機能しているのか」を分析し、その強みを組織として強化するSafety-IIの考え方を重視します。さらに、変化の激しい医療環境に対応するため、OODA(Observe・Orient・Decide・Act)の循環を意識し、変化を的確に捉え迅速に対応できる体制を整えます。ヒヤリ・ハット事例の共有、業務プロセスの標準化、Closed-loop communicationの徹底を通じて、安全を個人の努力に依存するのではなく、組織として担保できる仕組みへと高めていきます。職員一人ひとりが主体的に行動し、互いに声を掛け合い支え合う「協働」の文化こそが、真に強い病院を支える基盤です。当院は安全を最優先の価値として掲げ、その文化の醸成に継続して取り組みます。
第三は、診療の質と効率を高める医療DXの推進です。働き方改革による人手不足や人件費の上昇、物価高騰など、医療を取り巻く環境は一層厳しさを増しています。そのような状況の中で、医療従事者の負担軽減と医療の質向上を両立させるためには、医療DXの推進が不可欠です。診療支援や文書作成、情報共有などの領域においてAIの活用を段階的に進め、限られた医療資源を最大限に活かします。これは単なる業務効率化にとどまらず、医療者が患者さんと向き合う時間を確保し、安全で温かみのある医療を実践するための重要な基盤整備でもあります。
当院は今後も地域の先生方との連携を一層深め、質・安全・信頼を基盤とした医療を着実に提供してまいります。そして、南多摩医療圏の中核病院として地域医療を支え続けることが、私たちに課せられた使命であると考えています。今後とも変わらぬご理解とご支援を賜りますよう、心よりお願い申し上げます。