呼吸器内科

呼吸器内科専門医養成プログラム

当科の特徴

1.呼吸器外科・他科との連携による充実した診療体制

呼吸器外科あるいは他臓器内科と連携し、合併症が多い肺癌をはじめとする呼吸器疾患全般の診療を積極的に行っており、地域の医療機関やがん専門病院から多くの患者が紹介されます。呼吸器外科の手術件数は年間150例以上あり、肺癌症例も60例以上です。外来・病棟とも呼吸器外科と同じユニットに位置し、連携が非常に良く、診断的外科的肺生検や根治的肺癌手術でも初診から2-3週以内に行うことが可能であり、通常の大学病院のイメージと異なり第一線の市中病院の雰囲気です。逆に化学療法や放射線治療、緩和ケア、合併症・併存症の治療などには積極的に呼吸器内科が介入しています。呼吸器内科・同外科、放射線診断・同治療科、病理科が一体となった呼吸器疾患に対する集学的治療が可能であり、呼吸器内科・外科合同カンファレンスを週1回開催しています。

2.Common diseaseから難病、臨床研究まで

外来では重症喘息やCOPDの患者が多く、外来を担当してそれらの長期管理を学ぶと同時に、在宅酸素療法、CPAP、NIPPV導入例も数十例以上いるので、それらの導入・増悪時の入院を中心に重症・急性例も数多く経験できます。一方肺癌だけでなく間質性肺炎や膠原病・血管炎関連肺疾患など難病も毎週のように紹介されます。また市中病院の呼吸器内科としては珍しく肺循環障害(肺動脈性肺高血圧、慢性肺塞栓症、血管炎など)の診療も対応可能ですので、貴重・希少な症例を経験することができます。上記の疾患を中心に、臨床研究を立ち上げています。

3.病院全体から学び病院全体に貢献する

診療の場も救急診療、呼吸器内視鏡診断、急性期及び慢性期の人工呼吸管理、外来化学療法、緩和ケアと多岐にわたり、病院全体との関わりも多い科です。それを支える看護スタッフ、臨床工学士、理学療法士、薬剤師、歯科衛生士、医療ソーシャルワーカーとのチーム医療のコンセプトも根付きつつあり、医師の負担軽減の努力がなされています。今年度より正式に医師をはじめ上述の各医療職種による呼吸ケアチームにより病院全体の呼吸不全(人工呼吸)患者のラウンドも行っていく予定です。

4.良い環境と豊富な症例

都心に比べ恵まれた自然環境でありながら、都心まで1時間足らずでアクセス可能であり、学会・研究会の機会には出張時も含めて恵まれています。八王子市は人口40万人以上(平成25年3月現在)の東京都多摩地区随一の市であり、その周辺地区を含めると100万人以上の医療圏です。にもかかわらず高度急性期医療機関が極めて少なく、なかでも呼吸器専門医は不足しており、豊富な症例を経験することができます。

呼吸器内科コースの目標と計画

一般目標GIO

  1. プライマリーケアーの基本を2年間の初期臨床研修で修了したものが、呼吸器内科を内科のsubspecialty(専門分科)として選択した上で、総合内科の幅広い知識を学ぶ。
  2. 将来の呼吸器内科専門医となるためのより専門性を目指した深い知識と呼吸器診療に関係する専門技術の修得をすることを目指す。

行動目標SBOs

  1. 適切なコミュニケーションのもとに必要十分な問診を行うことができる。
  2. 一般内科および呼吸器病診断学の知識に基づいた身体所見をとることができる。
  3. 呼吸器救急疾患の初期対応ができる。
  4. 臨床に必要な解剖、呼吸病態生理、生化学が理解できる。
  5. 呼吸器疾患診断に検査を理解し、適切に選択することができる。
  6. 画像診断(単純Xp、胸部CT、胸部MRI、 RI検査、 内視鏡)のおもな所見と解釈が理解できる。
  7. 呼吸機能検査(動脈血液ガスを含む)について理解し、選択および実施ができる。
  8. 適切な細菌学的検査(抗酸菌検査を含む)、病理学的検査について理解し解釈ができる。
  9. 鑑別診断、確定診断のための適切な検査計画をたてることができる。
  10. 呼吸器疾患のおもな治療法について理解できる。また呼吸リハビリテーションとチームによるケアに参加し、チーム医療の意義を理解できる。
  11. 呼吸器疾患の検査と治療の合併症を理解し、その予防策、対応策を理解できる。
  12. 慢性期呼吸不全の適切な評価を行うことができ、治療とケア方針をたてることができる。また介護保険や特定疾患制度などの社会資源を理解し、適応することができる。
  13. 呼吸器内科コンサルテーションに適切に対応できる。(上級医への相談を含む)自ら経験した症例をまとめ、研究し、適切に報告、発表できる。

各年次における具体的行動目標

1.専修医1年目(R3)

  • 呼吸器内科の研修のみならず総合内科医として他臓器の内科病棟をローテーションすることも重要と考え、呼吸器内科病棟(3ヶ月前後)と他診療科をローテーションするプログラムを組みます。希望ならびに指導医との相談により呼吸器病棟の研修の期間は変更できます。
  • 日本内科学会認定内科医専門医試験を目標に内科全般についての知識をまとめていきます。

[具体的行動目標]
特に初期研修中に経験できなかった症例を経験し、一般内科医に求められる症状、診察手技、検査、治療に習熟する。
内科・呼吸器内科領域の救急症例に対して、適切な治療を行うことができる。
胸部単純X線写真の読影と解釈を自ら行うことが出来る。
呼吸機能検査、血液ガス検査の適応の判断、解釈ができる。
精密画像検査(CT、MRI、核医学など)の適応と解釈を述べることが出来る。
胸水検査・胸腔ドレナージを独立して施行できる。
気管支鏡検査のインフォームドコンセントを取得でき、また咽頭麻酔、気管支内腔観察を実施できる。
内科学会もしくは呼吸器学会地方会ほか関連学会へ最低1回演題提出を行う。

2.専修医2年目(R4)

  • 主として呼吸器内科に配属され、スタッフの指導の元に主治医として入院患者の診療をします(他診療科のローテーションも行い、内科専門医取得に向けての修練も並行して行います)。
  • またハイリスク症例を除く専門的手技を独り立ちしてできることを目標とします。
  • 診療に支障のない範囲で呼吸器関連各学会総会・研究会・講習会への参加・聴講も積極的に奨励します。

[具体的行動目標]
呼吸器専門医に求められる、医療面接、診察手技に精通し、呼吸器内科入院患者に対して、主治医として患者管理を行うことが出来る。
胸部CT、核医学などの専門的呼吸器画像診断を解釈することができる。
上級医の指導のもと気管支鏡(観察、気道内吸引、内視鏡ガイド挿管)、ベッドサイドでの手技(胸腔ドレーン、胸膜生検、経鼻挿管、ミニトラック(トラヘルパー))、睡眠呼吸モニターと解析、肺機能検査の習熟と解釈、気管切開(外科の指導)、呼吸管理(各種ベンチレーター、経鼻CPAP、BiPAP)、標準的気管支鏡手技(経気管支生検まで)を行う。
EBMに基づく論文詳説、批判的吟味を行うことができる。
上級医として、研修医のコンサルテーションを受けたり、適切な指導を行うことができる。
呼吸器学会地方会もしくは関連学会へ最低1回演題提出を行う。
R4からR5年次内に臨床呼吸機能講習会(肺機能セミナー主催)へ参加する。

3.専修医3年目(R5)

  • 1年間呼吸器病棟にて主治医として入院患者の診療にあたることを原則とします。専門的診療ならびに高度なハイリスク症例を含めた専門手技に習熟していきます。
  • 自分の呼吸器疾患での専門分野を確立するために、喘息、睡眠、肺機能、肺癌、肺循環その他の分野での文献の抄読、学会・研究会での発表と論文作成を目標とします。
  • 日本呼吸器学会専門医試験への準備を開始します。専門医受験資格は内科認定医獲得後、認定施設での3年以上の研修が必要です。当院は日本呼吸器学会認定施設ですので受験資格を得ることができます。

[具体的行動目標]

  1. 呼吸器病棟で、主治医として診療にあたるとともに独立して診療及び研修医の指導の中心となるとともに専門分野の研修を深める。同時に呼吸器ターミナルケアの考え方・実践も学ぶ。
  2. 一般呼吸器内科医として必要な手技と知識を修得して様々な診療依頼にも対応可能な能力を身につける。以下の手技はすべて独立して施行および指導ができること
    気管支鏡でのキュレット、生検、TBLBの手技
    胸腔ドレナージおよび胸膜生検、胸膜癒着術
    急性呼吸不全の管理(新しいベンチレーターのモードの習熟)
    慢性呼吸不全の管理(主に急性増悪での入院管理、外来・在宅での慢性期管理)
  3. 院内教育への参加をする。カンファレンス、病理検討会、CPCで発表する。
  4. 病理組織、細胞診の検鏡にもできるだけ参加する。
  5. 学会活動:症例報告(内科地方会、呼吸器学会地方会など)の発表2回。専門学会の年次総会(海外含む)への臨床研究発表1-2回を目標とする。雑誌投稿は症例1編以上、臨床研究1編以上を目標とする。
  6. 日本呼吸器学会や日本呼吸器内視鏡学会の専門医取得に向けて準備する。

その他

上記の後期研修プログラムは3年間で組んでいるが、1-2年間の短期、あるいは3年経過後の延長、伊勢原キャンパスと協力・連動しての多面的な研修・研究なども責任者と相談の上、臨床研修に支障ない範囲で随時可能である。後期研修(専修医:臨床助手)修了後は希望される方を大学院入学あるいは当院または伊勢原本院での採用も所定の審査にて許可されれば可能である。

所得可能な専門医資格

日本呼吸器学会専門医の資格認定

内科認定医取得後3年たっていることと、日本呼吸器学会に入会後4年以上たっていることが専門医試験の受験資格である。専門医試験は年1回行われる。さらに指導医になるには入会後10年以上、専門医の資格取得後5年間以上認定施設(本院)に勤務し、呼吸器疾患診療に従事することが条件になる。指導医認定は書類審査に基づいて行われる。

その他取得可能な専門医資格

  • 日本呼吸器内視鏡学会 気管支鏡専門医
  • 日本がん治療認定機構 がん治療認定医
  • 日本アレルギー学会

検査実績(平成23年)

気管支鏡検査 145件、呼吸機能検査(気道可逆性試験含む) 2487件

新入院患者疾患内訳(平成24年4-11月)
肺癌165例, 肺炎49例, 間質性肺疾患 24例, 気管支喘息 23例, 呼吸不全(急性あるいはCOPDなどの急性増悪)21例
呼吸器外科手術件数(平成25年) 170件(胸腔鏡率 87%, 肺癌手術61件)

スタッフ

坂巻 文雄:教授・医長
(日本呼吸器学会専門医・指導医、日本内科学会認定総合内科専門医、日本呼吸器内視鏡学会気管支鏡専門医、日本がん治療認定機構がん治療認定医)
専門(研究テーマ):呼吸器疾患一般,肺循環障害・肺高血圧症,肺癌化学療法・緩和ケア

田崎 厳:講師・教育研修科長
(日本内科学認定医、日本呼吸器学会、日本アレルギー学会、日本呼吸器内視鏡学会、日本感染症学会、日本老年医学会)
専門(研究テーマ):呼吸器疾患一般,慢性閉塞性肺疾患,呼吸不全,呼吸器腫瘍(肺癌)

伊藤 洋子:講師
(日本呼吸器学会専門医、日本内科学会総合内科専門医、日本呼吸器内視鏡学会気管支鏡専門医、日本禁煙学会認定禁煙指導医)
専門(研究テーマ):呼吸器疾患一般、炎症性肺疾患、慢性閉塞性肺疾患 等

近藤祐介:助教
(日本内科学会認定医、日本呼吸器内視鏡学会気管支鏡専門医、日本呼吸器学会、日本アレルギー学会、日本呼吸器内視鏡学会)
専門(研究テーマ):呼吸器内科一般, 睡眠呼吸障害

非常勤医師
黄 英文
(日本呼吸器学会専門医・指導医、日本アレルギー学会専門医、日本内科学会総合内科専門医)