臨床検査技術科
ご挨拶
ご挨拶
臨床検査技術科は、迅速で正確な検査結果の提供を信条に、患者さんへの最良の診断・治療に貢献できるよう日々努力しております。当科は、“検体検査”、“生理検査”、“病理検査”、“内視鏡検査”の4部門から構成され、一般診療の幅広い分野に携わりバリエーション豊富な検査体制を展開しています。
大学病院としての高度な医療を支えるため、常に最新の知識と高度な検査技術を患者診療へ提供できるよう、積極的に学会や研修に参加し学術活動にも日々研鑽しております。
また、検体検査および輸血検査の24時間体制、術中の迅速病理・細胞診断等行い、救急対応や増加するがん治療をサポートする体制を構築しております。 我々は臨床検査を通じて患者さん1人1人に寄り添った医療が提供できるよう、努力と改善を続けております。
臨床検査技術科
科長 町田 知久
基本理念
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- 患者さんにとって最高の医療が提供できるよう常に考え、チーム医療の一員として臨床検査を基に貢献する。
- 臨床検査の技術と知識を常に高め、患者さんに迅速に正確な検査結果を届けられるよう研鑽する。
- 医療人として医学・科学を追究し、高度で最新の臨床検査が提供できるよう日々努める。
お知らせ
今年度、最新の超音波診断装置、血液ガス分析装置、自動免疫染色装置が更新され、良質で正確な臨床検査が向上しました。
検査一覧
検体検査 | 一般検査 | 尿の成分分析、細胞、代謝物の形態検査、便潜血検査等 |
血液学的検査 | 貧血や白血病等の血液疾患の検査や血液凝固機能の検査等 | |
生化学的検査 | 血液中のタンパク質、脂質、糖や酵素等を化学的に分析する | |
免疫学的検査 | 感染症、腫瘍マーカーやアレルゲンを抗原抗体反応を用いて分析 | |
微生物学的検査 | 細菌感染の有無や菌種の同定、適合薬剤の検索 | |
輸血検査 | 血液型検査や安全な輸血を行うための交差適合試験等 | |
その他検査 | 遺伝子検査・染色体検査等 | |
生理検査 | 超音波検査 | 臓器、器官を超音波を用いて形態を観察し疾患の有無を検査 |
心電図検査 | 部弱な電気を捉え心臓の機能を調べる | |
呼吸器機能検査 | 肺の機能を機械を用いて多角的に検査する | |
脳波検査 | 脳からの微弱電気を捉え機能を検査する | |
病理検査 | 組織標本作成 | 臓器、組織塊から病理診断を行う顕微鏡標本を作製する |
細胞診断検査 | 細胞、細胞塊から顕微鏡を用いて癌や感染症の有無を形態学的に検査 | |
術中迅速検査 | 手術中に腫瘍が取りきれたか、転移があるのかを診断し手術室へ報告 | |
病理解剖 | 亡くなられた患者さんの、死因の追求、治療効果の確認 | |
内視鏡検査 | 内視鏡検査介助 | 内視鏡検査が安全に完了するように医師の手技をサポートする |
内視鏡治療介助 | 内視鏡による治療に対する医師の手技をサポートする |
体制
臨床検査技術科は4部門、60名の技師で構成されています。また、検査においては多くの技師が各種学会等で認定資格を取得するなど日々研鑚に努めながら担当しております。
検体検査室
検体検査とは、患者さんから採取した血液・尿・痰・組織などの検査材料(検体と総称する)で行う検査のことです。
検体検査の種類には以下の様な分野に分かれます。
検体検査測定装置一覧
<自動採血管準備装置> 医師の依頼に応じ自動で必要な採血管を準備する装置です。 |
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<全自動輸血検査装置> 輸血療法に関した血液型・不規則抗体・交差適合試験等の検査をする装置です。 |
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<全自動尿分析装置> (右) *US-3500 <全自動尿中有形成分分析装置> (左) 尿の糖・蛋白・潜血等の尿定性検査と尿沈渣の測定装置です。 |
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<便潜血用自動免疫化学分析装置> 便に血液が混じっていないかを検査する装置です。 |
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<生化学自動分析装置> 血糖・中性脂肪・コレステロール・尿酸・クレアチニン・AST・ALT・LD・γ-GTP・総蛋白・Na・K・CRP・薬剤・IgG・A・M等約40項目の測定を行っています。 |
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<全自動免疫測定装置> HCV抗体・HBs抗原・HBs抗体等を測定しています。 |
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<自動グリコヘモグロビン分析計> HbA1cの測定を行う装置です。 |
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<全自動化学発光酵素免疫測定装置> PSA・CEA・CA19-9等の腫瘍マーカーとTSH・FT4等のホルモンの測定を行なっています。 |
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<Blood Gas Analyzer> 血液ガス(pH・O2・CO2等)の分析装置です。手術室と救命救急センターにも設置されています。 |
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<自動血球分析装置> (右) <塗抹標本作製装置> (左) 白血球や赤血球の数で貧血や炎症などの有無を、白血球の種類でアレルギーや白血病などを調べる装置と、顕微鏡で白血球の種類を観察する標本を作成する装置です。 |
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<自動血球分析装置> 測定項目は上記XN-3100と同様。 |
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<糞便中カルプロテクチンZ測定機器> 主に潰瘍性大腸炎のバイオマーカーであるカルプロテクチンを測定する機器です。
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<血液凝固自動分析装置> 血液凝固機能を分析する装置です。 |
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<赤血球沈降速度測定装置> 赤血球沈降速度の測定を行う装置です。 |
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<微生物分類同定分析装置> 微生物の分類同定、薬剤感受性を調べる装置です。 |
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<免疫発光測定装置> *LUMIPULSE G600Ⅱ |
生理検査室
生理検査は、患者さまに直接電極や機器を装着し、体の表面や内部に異常がないかを調べる検査です。当院の生理検査室では、主に超音波検査、心電図検査、肺機能検査、血圧脈波検査、脳波検査、重心動揺検査、携帯型睡眠ポリグラフ検査、聴力検査を行っています。迅速かつ正確な検査結果を臨床各科に提供し、患者さまの健康維持に貢献できるよう日々研鑽に励んでいます。
超音波(エコー)検査
検査する場所にゼリーを塗り、体の内部を観察する検査です。音の透過や反射を利用した検査ですので、体への影響は殆どなく、色々な臓器や部位の検査に利用されています。プローブという小さな装置を体に当てて検査しますので、強く押されて痛みを感じた場合には遠慮なく担当技師にお申し出ください。途中で息を止めたり、体の向きを変えていただくこともあります。
腹部・泌尿器超音波検査
肝臓・胆嚢・膵臓・脾臓・腎臓の他、膀胱・前立腺・子宮・卵巣・腸管など腹部臓器の大きさや形をみたり、腫瘍や結石の有無を調べたりする検査です。その他、腹部リンパ節や腹部大血管についても調べることができます。
【患者さまへのお願い】
※腹部超音波検査は基本的に絶食となります。午前の検査の場合には当日は食事をせずにお越しください。午後の検査の場合には遅くとも検査4時間前には食事を済ませてください。水やお茶は時間に関係なく飲んでいただいて構いませんが、牛乳やコーヒー、ジュースはご遠慮ください。薬の服用は可能ですが、特別に医師の指示がある場合には、その指示に従ってください。
※膀胱・前立腺・子宮・卵巣の検査は尿が溜まった状態で検査を受けるようにしてください(水またはお茶を500mL飲んで30~60分後程度が目安です)。尿検査がある場合には、超音波検査後に採尿してください。
心臓超音波検査
心臓の大きさや動き、弁や血管の状態、血液の流れなどを調べる検査です。
【患者さまへのお願い】
※上半身は脱衣の状態で検査を行いますので、脱ぎ着しやすい服装でお越しください。
表在超音波検査
乳腺や甲状腺など、体表面に近い臓器の状態やリンパ節、皮下腫瘤などを調べます。
【患者さまへのお願い】
※甲状腺や頸部リンパ節など首の検査の場合には襟元の広く開いた服装でお越しください。また、首のアクセサリーは外しておいてください。
血管超音波検査
首や手足の血管の硬化度や狭窄の程度、血栓の有無などを調べる検査です。
【患者さまへのお願い】
※頸動脈など首の検査の場合には襟元の広く開いた服装でお越しください。また、首のアクセサリーは外しておいてください。
胎児超音波検査
胎児の発育状態や心拍の確認、羊水や胎盤の状態などを調べる検査です。超音波(音)を使用した検査ですので、放射線被ばくの心配はありません。通常の超音波検査で胎児や母体へ与える影響はありませんので、安心して検査を受けてください。
経食道心臓超音波検査
口から食道にプローブを入れ、食道から心臓を観察する検査です。検査は医師により行われます。食道は心臓のすぐ後ろにあるため、通常の心臓超音波検査と比べ鮮明な画像が得られます。
【患者さまへのお願い】
※検査の5時間前から食事・水分の摂取を控えていただきます。
※「説明および同意書」に記載されている内容をよくお読みください。
造影超音波検査
肝臓の腫瘤や乳房の腫瘤をソナゾイドといった造影剤を用い、通常の超音波検査よりも詳細な評価を行う検査です。検査時にソナゾイドを注射により静脈投与し、超音波検査によって体内に循環したソナゾイドの微小気泡を振るわせることで画像として表示されます。
【患者さまへのお願い】
※造影超音波検査は基本的に絶食となります。検査6時間前には食事を済ませてください。水やお茶は時間に関係なく飲んでいただいて構いませんが、牛乳やコーヒー、ジュースはご遠慮ください。薬の服用は可能ですが、特別に医師の指示がある場合には、その指示に従ってください。
※ソナゾイドには卵黄成分が使用されているため卵アレルギーの患者さまは事前に医師にお知らせください。
※「説明および同意書」に記載されている内容をよくお読みください。
肝臓エラストグラフィ検査
超音波を用いて肝臓の組織の硬さ(肝硬度)を測定する検査です。超音波による肝臓組織への振動波の速度を測ることで肝硬度を調べることができ、おおよその線維化の重症度の測定が行えます。
※肝臓エラストグラフィ検査は基本的に絶食となります。検査6時間前には食事を済ませてください。水やお茶は時間に関係なく飲んでいただいて構いませんが、牛乳やコーヒー、ジュースはご遠慮ください。薬の服用は可能ですが、特別に医師の指示がある場合には、その指示に従ってください。
※「説明および同意書」に記載されている内容をよくお読みください。
心電図検査
心臓が動くときに発生する微弱な電気的信号を波形として記録する検査です。装置から電流を流すわけではないので、痛みは全くありません。
標準12誘導心電図検査
一般的に行われる心電図検査で、不整脈や虚血性心疾患などの心臓障害のチェックや手術前・入院時の検査として行います。
【患者さまへのお願い】
※基本的に着衣のまま検査を行いますが、胸部・手首・足首を出してベッドに仰向けになっていただきます。ストッキングは脱いでいただきます。
ホルター心電図検査
小型の携帯型記録器を24時間装着して心電図を記録する検査です。日常生活の中で出現する不整脈の診断や動悸・胸部不快感などの症状時にどのような心電図変化があるのかを調べます。
【患者さまへのお願い】
※予約検査ですので、予約時間にはお越しいただきますようお願いします。翌日も取り外し・返却のためお越しいただきます。
※当日はシャワーや入浴はできませんのでご了承ください。
運動負荷心電図検査
運動をしていただき、心拍が上昇した時の心電図変化を調べる検査です。心拍増加に伴って起こる狭心症や不整脈の診断に有効です。運動方法には2段の階段を昇降するマスター負荷試験、ベルトコンベア上を歩行するトレッドミル負荷試験、自転車をこぐエルゴメーター負荷試験があります。ひざが痛い、足を怪我しているなど、運動するのに支障がある場合には事前に申し出てください。
【患者さまへのお願い】
※当日は運動しやすい服装でお越しください。また、汗拭き用のタオルと室内用の運動靴をご持参ください。
肺機能検査
鼻から空気が漏れないようにクリップでつまみ、専用のマウスピースを口にくわえて、勢いよく息を吸ったり吐いたりすることで肺の機能を調べる検査です。喘息などの診断や治療効果判定の他、全身麻酔にて手術を行う場合にも検査を行います。
【患者さまへのお願い】
※患者さまのご協力が必要な検査ですので、かけ声に合わせてしっかりと呼吸してください。
血圧脈波検査
腕と足の血圧の比や脈の伝わり方を調べることで、動脈硬化や動脈のつまりの程度を調べる検査です。ベッドに仰向けになって、腕と足首や足趾に血圧測定用の帯(カフ)、手首に心電図の電極、胸に心音マイクを置き検査します。
【患者さまへのお願い】
※厚着をされている方やストッキングをはかれている方は脱いで検査を受けていただきます。また、靴下も脱いでいただく場合があります。
脳波検査
頭に電極をつけて脳の働きの様子を波形として記録します。装置から電流を流すわけではないので、痛みは全くありません。主に目を閉じているときの記録をしますが、目を開けたときや深呼吸をしたときの脳波も記録します。また、光や音の刺激を与えたりすることもあります。脳波検査は、てんかんや脳腫瘍が疑われるとき、けいれんや意識障害があるときなどに行われます。
【患者さまへのお願い】
※検査当日は整髪料をつけずにお越しください。
※検査前にお手洗いを済ませ、ピアス・イヤリング・ヘアゴム・ウィッグは外してください。
※脳波検査は完全予約制ですので、開始時刻までにお越しいただきますようお願いします。
※睡眠状態を記録する場合には、なるべく自然に寝られるようにやや寝不足の状態でお越しください。また、準備がありますので予約時刻の30分前にはお越しいただきますようお願いします。
※睡眠状態を記録する場合で、入眠できないときは医師の指示で睡眠導入剤を使用することがあります。
重心動揺検査
めまいや平衡感覚の状態を開眼・閉眼の状態で各1分間直立して調べる検査です。靴を脱いだ状態で検査を行います。メニエール病やパーキンソン病などの診断に役立ちます。
携帯型睡眠ポリグラフ検査
睡眠中の呼吸の状態を調べる検査で、睡眠時無呼吸症候群のスクリーニング検査として利用されています。検査のやり方や注意点を説明し、装置を貸し出し致しますので、患者さまご自身で就寝前にセンサーを装着し、翌日外して装置を返却していただきます。返却は患者さまご本人でなくても構いません。
病理検査室
病理検査の業務は大きく4つに分けることができます。
1.病理組織診断
人体から採取された生検材料や外科材料を基に標本作製を行い、顕微鏡を駆使して最終診断します。
生検材料: | 良悪性の診断をつけ、おもに外科的侵襲のある治療を施すべきか否かを病理学的に診断します。その後の臨床的対応に方向性を与える役目を果たしています。 |
外科材料: | 主に手術により採取されたものがいかなる性状の腫瘍であったか深達度の程度やリンパ管、静脈浸潤ならびに完全に切除されていたかについて顕微鏡を用いて組織学的に診断します。 →その病変の最終的組織診断をつけます。 |
診断に際しては確定診断が困難な場合、ヘマトキシリン・エオジン染色に留まらず特殊染色、免疫染色も施して最終診断します。特に免疫染色は最終診断の補助的役割を果たすだけでなく、術後ホルモン療法や分子標的薬等後療法の有無を決定します。腫瘍が産出する蛋白を発色剤を利用して抗原抗体反応や遺伝子検査により精査します。さらに、腎糸球体病変の診断や治療方針の決定に関しては、上記の染色と共に蛍光抗体法を施行し種々の検査結果から総合的に診断を行います。
2.迅速病理診断
術前に組織学的に診断が困難な症例に際し、術中に凍結標本を迅速に作成し顕微鏡を駆使して一時的に診断を付けます。
おもに腫瘍の性状と切除断端(腫瘍が完全に切除されているか否か)追加切除の有無等手術の治療内容に影響を与えます。
3.細胞診断
人体からの自然排出や人体表面や体内に発生した腫瘤から材料(腹水や胸水ならびに子宮頚部、内膜等)を採取ならびに塗布して染色液で染色し、顕微鏡を用いて診断します。即効性、簡便性に優れているためスクリーニング検査等用いられています。また組織と比較して比較的安価です。
4.病理解剖
当病院において病気によって亡くなられた患者さまを対象とし、解剖を施すことによって全身を俯瞰しその疾患の詳細な性状や死因について検討します。またその症例が教育的症例あった場合Clinico-Pathologic-Conference(C.P.C)臨床病理合同カンファレンスが行われる場合があります。
1-1.病理組織診断
胃や大腸などの小検体を内視鏡的に採取したもの(生検材料)、あるいは手術で切除した臓器(手術材料)が評価の対象となります。手術材料の場合は、肉眼で病変を観察し、診断に必要な部分を選択して切り出し、標本化します。最終的に顕微鏡で詳細に観察し、腫瘍性(主に癌)か非腫瘍性(炎症等)かなどを診断します。腫瘍の場合は、どのような性格を有する病変か(良悪性の鑑別、組織型の決定)、病変がどのくらい広がっているのか、または病変が取りきれているのかなど顕微鏡を使って詳しく判定します。また、組織標本から遺伝子学的検索を施行することにより、術後の治療薬の適正化を決定し、その後の治療方針など臨床的対応に方向性を与えます。
では、摘出された組織がどのような工程を経て病理診断に導かれるのか以下に説明します。
主な作業工程
(1)切り出し→(2)包埋→(3)薄切→(4)染色→(5)鏡検
なお、(1)~(4)までの工程は、トレーニングをうけた専属の病理技師が行っています。
手作業の多い部門であるため、当院では最新の機器やシステムを導入し医療安全対策を強化しています。
(1)切り出し
手術材料の場合は、肉眼写真を撮影し、標本化する箇所を切り出し、カセットにつめます。
切り出した箇所を作図します。内視鏡検体は最新の動画撮影システムを用いて、録画しながら検体処理を行います。
(2)包埋
自動包埋装置において、一晩かけて組織をアルコールからキシレン、パラフィンへと浸透させ、最終的にパラフィンで包埋します。包埋する際は医療安全の観点から、最新の動画撮影システムを用いて処理を行います。
(3)薄切
ミクロトームを使い、3μm(3/1000mm)の切片に薄切し、水槽に浮かべます。
2.5次元バーコードで管理された患者情報からガラスを出力し、薄切した切片を貼り付けます。
伸展板でシワを伸ばした後に次の染色工程に進みます。
(4)染色
ヘマトキシリン・エオジン染色を施します。
必要に応じて、特殊染色や免疫組織化学染色を施行します。
(5)鏡検
病理医が顕微鏡で組織診断します。
良悪性の診断・組織型の決定
1-2.蛍光抗体法
ループス腎炎や膜性腎症、IgA腎症等を疑う腎針生検が評価の対象となります。主に腎糸球体に沈着する自己抗体や免疫複合体、補体を検出し、蛍光顕微鏡を使って判定します。腎糸球体病変の診断や推定において必要不可欠な検査であり、その後の治療方針など臨床的対応に方向性を与える一助となる重要な役割を担っている。
では、摘出された腎臓生検がどのような工程を経て病理診断に導かれるのか以下に説明します。
主な作業工程
(1)切り出し→(2)包埋→(3)薄切→(4)染色→(5)鏡検
なお、(1)~(4)までの工程は、トレーニングをうけた専属の病理技師が行っています。
(1)切り出し
腎針生検は、ルーペを用いて腎糸球体が含まれる部位を切り出します。
(2)包埋
切出した腎針生検をドラフト内でOCTコンパウンドに埋め、ドライアイスとヘキサンで凍結します。
(3)薄切
クリオスタットを使い、2μm(2/1000mm)に薄切します。
薄切された切片をスライドガラスに貼付け、冷風で乾燥します。
(4)染色
蛍光抗体法を施します。
(5)鏡検
暗室内で病理医が蛍光顕微鏡を用いて組織診断します。
抗IgA抗体
2. 術中迅速組織診断
手術中に切除範囲や術式を決定するため、手術室から未固定で提出された新鮮組織を凍結し、標本を作製する。診断結果はインターホンにより口頭で執刀医に伝える。検体提出から報告までの所用時間は10分程度である。
この迅速診断による臨床医とのやりとりにより、術式が変更になりうる場合があり、重要な検査と位置づけられています。なお、この凍結標本での正診率は80~90%とされており、最終診断はその後のホルマリン固定後の診断に委ねられます。
主な作業工程
(1)包埋→(2)薄切→(3)染色→(4)鏡検
(1)包埋
提出された組織片をドラフト内で必要な箇所を切り出します。
OCTコンパウンドに組織片を埋め、ドライアイスとヘキサンで凍結します。
(2)薄切
クリオスタットを使って薄切し、スライドガラスに貼り付けます。
(3)染色
時間を短縮したヘマトキシリン・エオジン染色を施します。
(4)鏡検
染色後、ただちに病理医が鏡検・診断し、インターホンで執刀医に報告します。
3-1.細胞診断
自然尿や胸腹水、胆汁などの液状検体、子宮頚部や気管支などを擦過した検体、乳腺や甲状腺、唾液腺などの腫瘤性病変(しこり)を穿刺吸引した検体を対象とします。組織診と比較し、非侵襲性で迅速かつ簡便であり、ある程度の反復検査が可能です。細胞診標本は細胞検査士が鏡検し報告しますが、異型細胞がみられた症例に関しては細胞診専門医と鏡検・協議し最終的な診断を確定します。
主な作業工程
(1)検体処理→(2)染色→(3)鏡検
(1)検体処理
細胞をスライドガラスに塗抹し、ただちに95%アルコールで固定します。
(2)染色
パパニコロウ染色を施し、検体によってはギムザ染色標本も作製します。
(3)鏡検
顕微鏡で判定します。癌症例や判定困難症例などは専門医を含めたスタッフ全員でディスカッションします。
3-2. 術中迅速細胞診
手術中に胸腔や腹腔を洗浄し、その洗浄液中における癌細胞の有無を迅速に確認することにより、病期や術後化学療法の適応の有無を決定します。
主な作業工程
(1)検体処理→(2)染色→(3)鏡検
通常より短縮したパパニコロウ染色を施し、二人以上の細胞検査士でただちに鏡検し、細胞診専門医の許可を得て執刀医に報告します。
4. 病理解剖
不幸にして当院でお亡くなりになった患者さんに対して、ご遺族の承諾のもとに病理解剖が行われることがあります。病理医が行う解剖によって、臓器横断的に全身を俯瞰し、生前に知ることのできなかった死因の解明や病気の進行、治療内容の効果判定など施された医療に対して検討・解析します。
内視鏡検査室
内視鏡検査室の役割について
内視鏡検査とは、内視鏡スコープを用いて直接消化管内等を観察し、ポリープや癌、その他の病変を見つける検査です。現在では、内視鏡スコープに処置具と言われる器具を挿入し、ポリープ等を切除するといった治療。出血部位を止血する。誤って飲み込んでしまった異物を取り出すといった処置が出来るようになっています。また、一般的には内視鏡というと医師と看護師のみで構成されているイメージがあると思いますが、当院では内視鏡検査・治療を実施する医師、その介助を専門的に行う臨床検査技師、患者管理を行う看護師がチームとして診療する体制となっています。内視鏡検査室での臨床検査技師の専門的な役割は検査・治療の介助となりますが、介助とは患者様の苦痛や不安を少しでも解消できるように声掛けを行う事や、検査での組織採取や色素散布、検体管理の他、治療時の器具出しを行います。それ以外にも、内視鏡や関連機材の管理も臨床検査技師が担っています。内視鏡検査の精度に大きな影響を及ぼす可能性があるため、機材の細かなチェックは必要不可欠な業務の一つです。
当院における主な内視鏡検査・治療項目
上部消化管内視鏡検査(日帰り) | 下部消化管内視鏡検査(日帰り) |
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上部消化管内視鏡検査(食道・胃・十二指腸) | 大腸内視鏡検査 |
経鼻内視鏡検査 | 大腸コールドポリペクトミー |
超音波内視鏡検査 | 超音波内視鏡検査 |
胃瘻交換 |
その他の消化管内視鏡検査(日帰り) | |
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カプセル内視鏡検査 |
上部消化管内視鏡治療(入院) | 下部消化管内視鏡治療(入院) |
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胃・食道静脈瘤治療 | 大腸ポリープ・粘膜切除術 |
早期胃癌・早期食道癌の内視鏡治療 | 早期大腸癌の内視鏡治療 |
胃瘻造設・交換・抜去 | |
超音波内視鏡下穿刺吸引生検(EUS-FNA) |
なお、当院では健診胃カメラを実施しております。詳しくは当院健康管理センターへお問い合わせください。
内視鏡スコープ保管庫 |
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内視鏡スコープ洗浄 《OER-3、OER-4》 内視鏡スコープは、国で認められた高水準消毒液である過酢酸を用いて消毒し、再利用しています。専用の洗浄機を利用し確実な洗浄・消毒を行っています。また、過酢酸は成分がお酢なので、人や環境に対しエコロジーです。 |
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挿入形状観測装置 《UPD-3》 大腸内視鏡検査において、内視鏡スコープが、患者の体の中でどのような形状になっているか、磁場を利用し観測する装置です。検査時間の短縮に役立ち、患者の苦痛を最小限に抑えます。 |