腎泌尿器科
ご挨拶
当科は、2002 年の開設以来、八王子市および近隣市町村を含め、神奈川県や山梨県など近隣県からも積極的に患者さんの受け入れを行ってきました。そのため現在も地域の皆様を含めた多くの方々が当科を受診され、地元に密着した親しみやすい大学病院として認められています。
扱う疾患は前立腺癌や腎癌をはじめとする泌尿器科癌、尿路結石症、前立腺肥大症、過活動膀胱をはじめとする下部尿路機能障害、骨盤臓器脱(膀胱瘤、子宮脱)などの女性泌尿器疾患、副腎腫瘍、尿膜管遺残症や腎盂尿管移行部狭窄症など多岐にわたっております。すべての疾患にベストの対処ができるように体制を整えています。
診療内容
外来診療
前立腺肥大症や過活動膀胱といった排尿障害(下部尿路機能障害)に対する薬物療法、また前立腺癌に対する抗アンドロゲン療法(ホルモン療法)やその他悪性腫瘍に対する外来化学療法、尿路結石症に対する体外衝撃波治療などを行なっております。また術後や治療後のフォローアップもきめ細かく実践しております。2019年4月から排尿機能を詳細に評価するウロダイナミクス検査を開始し、排尿障害治療の充実を図っています。
入院診療
内視鏡手術など外科的治療法を中心とした診療を行っております。腎癌や腎盂尿管腫瘍などに対する腹腔鏡下手術、前立腺肥大症や膀胱腫瘍に対する内視鏡手術、尿路結石症に対するレーザー砕石術に加え、浸潤性膀胱癌などでは一般的な開腹手術も行っております。最近では精索静脈瘤に対する顕微鏡下手術や尿膜管遺残症に対する単孔式手術、難治性尿道狭窄症に対する尿道形成術などあまり他施設では行っていない手術も実施し良好な成績を収めています。
主な対象疾患
副腎腫瘍
各種内分泌学的検査で精査した後、必要な場合(内分泌活性を有するあるいは腫瘍が大きいなど)に応じて腹腔鏡下摘除手術を実施しています。当院では比較的大きな褐色細胞腫に対する腹腔鏡下摘除手術も安全に遂行しています。
腎細胞がん
4cm以下の小径腎癌に対して手術が可能であれば腹腔鏡下腎部分切除術を行っています。ご高齢の方や既住疾患のため手術が困難である方には画像診断科と協力しラジオ波アブレーション治療にも取り組んでいます。4cm以上の大きな腫瘍と周囲との癒着などの理由により部分切除が難しい場合には腹腔鏡下腎摘除、あるいは開腹手術(部分切除・全摘除)を行っています。転移、再発例に対しては分子標的薬治療と新規免疫療法を組み合わせた最新の治療法を行っています。
腎盂・尿管癌
先行化学療法、当院では治療成績の良いddMVAC療法を行った後に腹腔鏡下腎尿管全摘術、あるいは周囲への浸潤がある場合には開腹腎尿管全摘除を行います。転移を有する場合にはシスプラチンを中心とした化学療法が選択されます。その後もできる限り二次治療、三次治療まで取り組んでおります。
膀胱癌
経尿道的腫瘍切除を行い、病理結果に応じてさまざまな治療法を行います。筋層浸潤癌では膀胱全摘除術が基本となりますが、当院では可能あれば膀胱温存を目的とした治療法(内視鏡手術と放射線治療、化学療法と膀胱部分切除手術)も開始しました。まだ少数ではありますが再発例はなく良好な治療実績が得られています。また膀胱全摘除術後の尿路変更には集尿袋装着が不要でQOLの良好な代用膀胱造設も積極的に行っています。
前立腺癌
臨床病期に応じてまた患者様のご希望も伺って診療方針を決めております。手術療法については2024年度より手術支援腹腔鏡手術ロボット:hinotoriを用いた前立腺全摘除が可能になりました。またその他の局所療法として放射線治療科の協力のもと強度変調放射線治療法も数多く実施しています。がん部分治療(Focal therapy)である高密度焦点式超音波治療(HIFU)は東海大学腎泌尿器科教授 小路先生に依頼して東海大学(神奈川県伊勢原市)で行っております。転移を有する進行がんの場合には新規ホルモン治療薬と抗がん剤(ドセタキセル)を組み合わせた薬物療法など比較的新しい治療法に取り組んでおります。
その他泌尿器科悪性腫瘍
精巣腫瘍から骨盤内肉腫や陰茎癌などの稀な悪性腫瘍まで手術治療を中心に治療を行っています。
尿路結石症
2018年より最新の体外衝撃波結石砕装置を使用し治療実績が向上しました。さらに当院にはレーザー破砕装置の他に超音波砕石装置、圧縮空気破砕装置があり結石の大きさや部位に応じて様々な内視鏡手術法が選択できます。近年では経皮的手術と経尿道的手術を組み合わせた同時破砕術(ECIRS)を開始しこれまで困難であった大きな腎尿管結石も内視鏡下で破砕摘出が可能になりました。
前立腺肥大症
各薬物療法が中心となりますが、効果不十分な場合や尿閉、手術希望時には尿流動態検査できちんと下部尿路機能評価を行った後に手術療法を検討します。これまでの経尿道的前立腺切除術(TURP)に加え経尿道的前立腺核手術(TUEB)と2024年より侵襲が少ない経尿道的水蒸気治療(WAVE)も開始しました。これは水蒸気を用いて組織を変性させる治療法で手術時間も短く出血も少ない特徴があります。
過活動膀胱・低活動膀胱など
適切な評価を行ったのちに理学療法学や生活指導(行動療法)、薬物療法を行います。難治例にはボツリヌストキシン膀胱内注入法を実施しています。当院では全科の入院患者さんを対象に排尿ケアチームによる排尿自立指導(入院中の尿閉、頻尿、夜間頻尿など)を行っており、高い評価を得ています。
その他疾患
・尿道狭窄症
従来の内視鏡下切開手術に加えて、難治例には自分の口腔粘膜組織を用いた尿道形成術を行い、良好な成績を収めています。
・腎盂尿管移行部狭窄症・尿膜管遺残症
腹腔鏡下形成術を行っています。特に尿膜管遺残症に対しては臍から1力所の創部で行う単孔式手術を実施しています。
・精索静脈瘤
すべて顕微鏡下手術を行い良好な治療成績が得られています。
主な診療実績
医師一覧
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医師名 座光寺 秀典 (ざこうじ ひでのり) 身分 教授・医長 専門分野 泌尿器科全般 専門領域 副腎腫瘍、排尿障害、泌尿器腹腔鏡下手術、尿路再建治療 専門医・認定医 日本泌尿器科学会指導医・専門医、日本泌尿器内視鏡学会認定腹腔鏡技術認定医、日本内視鏡外科学会技術認定医(泌尿器腹腔鏡)、日本内分泌甲状腺外科学会専門医、日本ロボット外科学会ロボット手術認定医、日本がん治療認定医機構がん治療認定医
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医師名 新田 正広 (にった まさひろ) 身分 臨床准教授 専門分野 泌尿器科全般 専門領域 泌尿器ロボット手術、腹腔鏡手術、泌尿器悪性腫瘍 専門医・認定医 日本泌尿器科学会指導医・専門医、日本泌尿器内視鏡・ロボティクス学会泌尿器腹腔鏡技術認定医、日本内視鏡外科学会技術認定医(泌尿器腹腔鏡)、日本がん治療認定医機構がん治療認定医、泌尿器ロボット支援手術プロクター認定医
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医師名 黒田 悟史 (くろだ さとし) 身分 助教 専門分野 泌尿器全般 専門医・認定医 日本泌尿器科学会専門医
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医師名 内田 貴人 (うちだ たかと) 身分 助教 専門分野 泌尿器全般 専門医・認定医 日本泌尿器科学会専門医
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医師名 古屋 良太 (ふるや りょうた) 身分 臨床助手 専門分野 泌尿器全般 専門医・認定医 日本泌尿器科学会専門医
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医師名 中西 嘉浩(なかにし よしひろ) 身分 臨床助手 専門分野 泌尿器科全般
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医師名 小路 直 (しょうじ すなお) 身分 非常勤医師 専門分野 泌尿器悪性腫瘍、排尿障害 専門領域 前立腺高精度生検、前立腺癌に対する高密度焦点式超音波療法をもちいた前立腺部分治療(参考動画: http://www.ampo.jp/movies/vol76/)前立腺肥大症に対する低侵襲内視鏡手術、腎・副腎腫瘍に対する腹腔鏡手術、癌の薬物治療(分子標的治療薬、化学療法)
備考: 外来日 第4火曜日午前中専門医・認定医 日本泌尿器科学会専門医、日本泌尿器内視鏡学会認定腹腔鏡技術認定医、日本内視鏡外科学会認定腹腔鏡認定医、日本医師会認定産業医、日本がん治療認定医機構がん治療認定医
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医師名 朝長 哲朗 (ともなが てつろう) 身分 非常勤医師 専門分野 泌尿器科全般 専門医・認定医 日本泌尿器科学会専門医
診療担当表
月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | |
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午前 | 黒田 悟史 内田 貴人 |
座光寺 秀典 小路 直(4) |
新田 正広 黒田 悟史 中西 嘉浩 |
中西 嘉浩(1) 黒田 悟史(2) 内田 貴人(3) 座光寺 秀典(4・5) |
座光寺 秀典 新田 正広 内田 貴人 |
座光寺 秀典 (2) 中西 嘉浩(2) 黒田 悟史(4) 内田 貴人(4) 新田 正広(5) |
午後 | 黒田 悟史 内田 貴人 |
座光寺 秀典 | 新田 正広 黒田 悟史 中西 嘉浩 |
中西 嘉浩(1) 黒田 悟史(2) 内田 貴人(3) 座光寺 秀典(4・5) |
座光寺 秀典 新田 正広 内田 貴人 |
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専門外来 午後 | 排尿自立指導 排尿ケアチーム |
【排尿機能検査】 座光寺 秀典 |
研究
1. 尿膜管遺残症に対する単孔式尿膜管摘除術の後ろ向き検討 東海大学共同研究
2. 膀胱全摘術を行った膀胱癌症例における予後に関する後方視的他施設共同研究 東海大学共同研究
3. 根治切除不能または転移性腎細胞癌に対するNivolumab併用画像誘導3次元集光式超寡分割照射法(IGE)による非照射病巣の縮小効果増強の有無を検証する多施設ランダム化第2相比較試験
- 当院 放射線治療科 山梨大学放射線科との共同研究